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ギルバートに恋した数日間とプラスαのこと(劇団ひまわり『赤毛のアン』感想)

※Aチーム配信はまだアーカイブ視聴期間中だと思いますが、ネタバレ全開です。

※配信アーカイブも見直さずに書いているので、セリフの引用や場面の描写等、正確でないかもしれません。すみません。気がついたら後でこっそり直します。

 

 

赤毛のアン』という物語を初めて読んだ時、私は小学生で、登場時のアンより小さい歳でした。

 

学校のテストで点を取ることが比較的得意だった以外、特に取り柄のない子供でした。

かわいいとか美人とかはお世辞でも言われたことがないし、性質的な「可愛げ」はもっとなかった。知らない大人にも平気で口答えするし、黙っていればいいところで「要らんことを言う」子で、先生にはよく怒られたけど、今になって思い返すと自分が先生だったとしても扱いにくい子供だったろうな、と思う。

本を読むことが大好きで、大人に将来の夢を聞かれたら「さっか」「しょうせつか」と答えていました。そう言っておくと、親戚の人や周りの大人が、本を買ってくれたり、本棚にある古い名作全集なんかを次々貸して読ませてくれるようになって、手当たり次第に読んだ祖母の家にあった全集の中の一冊が、『赤毛のアン』でした。

 

当時、読んでいた他のたくさんの本の中では、「勉強が得意な女の子」というのはだいたい、大人の言うことをきちんと守る、おとなしい優等生タイプの子として描かれているのが普通で、でも自分は勉強はできるけど(と自分で思っている生意気な子供だった)、こうじゃない、と思っていた。

だから、いつもおしゃべりしすぎだと叱られていて、赤毛やそばかすというコンプレックスがあって、でもちっともへこたれずに明るくたくましく自分の世界を生きているアンが、ガツガツ勉強してギルバートとトップ争いをして、奨学金を獲得したり先生として働いてお金を稼いだりして、進学して恋や友情を謳歌して人生を切り開いていく、という物語が、すごく痛快で好きだったんですね。登場時は「器量が悪い」女の子として出てくるアンが、大人になって「聡明な美人」として描写をされるようになっていくの、心の支えだった。まあ、自分がアンみたいな聡明な美人になれた訳では決してないんですが。

図書館に通って、『アンの青春』『アンの愛情』……とシリーズを夢中で読破しましたね。懐かしい。

 

自分語りが長くなってしまった。

何が言いたかったかというと、「そんな子供の頃から大好きだったお話の舞台化作品に、推しが出演することになった、しかもヒロインの相手役」という事態に、いかに私が浮かれたか!!、

ということです。

えっこれ浮かれていいよね?? さすがに浮かれるだろ。だって、推しが、あづくんが、ギルバート!?!?

 

というわけだったので、都合さえつけば全公演でも見に行きたいくらいの気持ちだったのですが、仕事が休めなかったり変更があったりし、結局、7公演観劇したうちBチームが6公演、Aチームが1公演という、だいぶアンバランスなことになってしまいました。

以下、好きだった登場人物とか場面をいくつかピックアップして書きますが、そういうわけでわりと見れたものに偏りはあるかも。ご了承ください。

 

■マシュー (B 金井真澄さん、A 青山伊津美さん)

先に見たBチームと後で見たAチームで、いちばん印象が違ったのがマシュー。本当に同じセリフ、同じ脚本なの??って思わず思ってしまうくらい、それぞれのマシューが際立っていて、それがすごく面白かったです。役者さんって凄い。

Bチームの金井さんのマシューは、口下手ではあるけれど、どこか「お茶目な大人」な一面がある感じがして、大好きでした。最初の鼻歌から楽しそうだったり、馬車でアンを連れて帰ってくるシーンの、だんだんアンのおしゃべりが楽しくなってきたんだな~~っていう表情や声の変化がすごく印象に残ってる。アンとは、歳は離れているけど、お父さんと娘というより友達みたいな関係なのかなって感じがして、それも好きでした。リンド小母さんに謝らないと強情を張るアンに対して、マシューが「心から謝らなくていいんだ。形だけだってな」と言うシーン、Bチームは「大人の友人」として対等にアドバイスをしてるみたいな感じがして、大好きでした。

Aチーム、青山さんのマシューは、とにかく演技力が物凄くて震えた。こういう人いるよね……、って思わず思ってしまったけど、「マシューなら口調はこう、挙動はこう、癖はこう、パイプをいじるときはこう」みたいな人物像を練り上げて完璧に作り込んでる!っていう感じ。先に見たBチームより、もっとシャイというか不器用なマシューで、でも、すごく説得力のあるキャラクターになっていたなぁと思います。いやぁ役者さんって凄いな……。

 

■マリラ(林佳代子さん)

マリラは、まじめで厳しくて信仰深くて堅物、だけど「鬼ではない」というか、本当は心が温かい、その心の柔らかいところを普段は隠して生きている、という人物像がすごく伝わってきて、素敵でした。

グリーンゲイブルズにやってきたものの手違いだったと分かったアンが泣き出したときの「何も今夜追い出そうなんて思わないよ」とか、昨夜は嬉しくて眠れなかったと話すアンに「うちでは男の子が欲しいんだ、女の子じゃ駄目なんだよ」と返すときの情が沸きつつあるのを振り払うみたいな口調とか、マリラがいつも隠している心の温かいところが演技に滲み出ていて、役者さんって凄い……と思っていました。圧巻は、アンと一緒に馬車でスペンサー夫人の家に向かう間、アンの身の上話(余談ですが、身の上話を聞こうとする時点で、既にマリラはアンを引き取る選択肢も念頭に置いてるんじゃないかなぁと私は思ってる。)を聴いているときの表情。

恐らく、このアンの身の上話というのが、マリラの想像していた以上に悲惨というかハードで、ここでマリラが心を動かされてしまったことが、この後のブリュエット夫人との対決(?)に繋がるんだと思うんですよね。産まれてすぐ両親が亡くなってしまった話を聞いているあたりからもう顔が険しい。「トマスやハモンドの小母さんは、優しくしてくれたかい」には、せめてそうであってくれ、という気持ちが滲んでいるし、その後のカモメのくだり、まず、いつもならアンの空想めいた話は聞き流すか皮肉の一つでも言いそうなマリラが、黙って一緒にカモメを見上げてしまうということ自体、アンの話に気持ちを持っていかれてしまっている証拠だと思うんだけど、ここのマリラの表情が、壮絶なんですよ……何回見ても泣いてしまった。これがあるから、そのあと、ブリュエット夫人のところに渡してこれ以上アンに苦労だらけの人生を送らせるのはあんまりだ、という気持ちにマリラはなったんだろうなと思っていて、その一連の流れの説得力がすごい。すごく、すごく好きなマリラ。

そういうわけで例の「赤ちゃんのちカモメ」に注目する余裕は実は私はあまり無かったんだ。ごめんな、推し。

 

■ダイアナ(B 吉田空さん、A 勝木奈生さん)

ダイアナ、BとAでかなりキャラクターが違いましたね。どちらも大好きです。

Bのダイアナは、とにかく、とにかくとにかくとにかく、かわいい!!!!!!

まず、小柄でか弱い(ように見える)、可憐な声の女の子が、成績トップ争いをするような子であるアンに「あなたは愛する力も強いけど、憎む力も強いのね」「愛も憎しみも同じ心の光と影、表と裏よ。本当は、同じ力なのよ」とか言って、アンから「あなたは恐ろしい人ね」「あなたの洞察の深さを私は誰よりも愛している」とか言われてるの、端的に言ってツボです。

対して、Aのダイアナは、もっと大人っぽくて、いかにも聡明な女の子、という感じ。妹のミニーメイが病気になってしまってアンとギルバートに助けを求める場面、この子なら、これをきっかけにアンとギルバートが仲直りしないかな……という計算もできるのでは、とか、つい勘繰りたくなる。上のアンとダイアナの手紙のやりとりの場面、この子ならそれくらいのことは当然のように見抜くだろうなぁと思わせる。すごく大人で、頼りになる雰囲気がある。普通に友達になりたい。

アンとダイアナの関係性がすごく好きです。アンとやりとりするダイアナの手紙の上で書いた部分の内容は、原作ではダイアナの言葉ではなかったと思うので、ここに関しては私は脚本・演出推し、なのかもしれない。とにかく個性というか生命力の強いアンの、親友であるダイアナもまたただの平凡なお嬢様ではない、という爪痕を残すシーンだなと思っていて、めちゃくちゃ好き。

お茶会で木苺のジュースと間違えてお酒を飲んで酔っ払ってしまうところ、BのダイアナとAのダイアナのキャラクターの違いがすごく出ていて、楽しかったです。しかし、二人とも、酔った人の所作とか、どうやって研究したんだろうか……。

 

■ジョシー(B 黒川聖菜さん、A 那須絢音さん)

このジョシーはどうしても嫌いになれない、と思いながら、Bチームの公演をずっと見てました。

Bのジョシー、いじらしいんですよね。ちょっと屈折したところがあるというか、感情を素直に出すことが苦手なタイプの子なんだろうなと思う。ギルバートが思いがけず席替えで隣の席に来ても、こっそり嬉しそうに吃驚するのに、直接話しかけはしないし、あからさまにギルバートの方ばかり見てるわけでもない、むしろずっと表情は硬くて、ただ隣をずっと意識して気にしてる……みたいなところとか。アン(やルビー)に意地悪をするの、ギルバートが好きだからというのはあるんだろうけど、それ以前に、自分のできない真っ直ぐな感情表現を人前で楽しそうに全力でできて、それをみんなに受け入れられて人気者になっていくアンが羨ましくて、それでイライラするんじゃないかなぁ。そんな風に思わせてしまう、陰の部分も含めて魅力的なジョシーでした。

Aのジョシーは逆に感情がストレートに表情に出る女の子で、これはこれでかわいかった。この子は別に、もともと性格が捻くれてる訳でも意地悪なわけでもなく、ただ単純に、ギルバートのことが好きで好きで大好きで、独り占めしたいから他の女の子、アンやルビーが邪魔なだけなんじゃないかなぁ。すごく素直。かわいい。

 

■あと好きだった場面とかセリフとか、メモ的にごちゃまぜ感想

・ 駅長さん(山口泰央さん)、実はかなり推しです。飄々としたキャラクターに朗々とした話し声と笑い方が好きで、登場シーン、序盤の楽しみでした。

・ アン(本多明鈴日さん)のセリフでいちばん刺さったのは、「欲しくないのね!?」です。原作と比べて、この舞台版は、アンが「孤児(みなしご)」であること、それに対する人々の差別的な意識、みたいなものが強調されてる印象があります。原作読んでた頃の自分が子供すぎて意識してなかっただけかもしれないけど。

・ アンの演技で凄いなと思ったのは、自分が連れてこられたのは手違いだったと知って泣き出すのに、マリラに名前を聞かれて「コーデリアって呼んでくれます?」って言い出すところ。この言い出す時、俯いたままで、声色だけが、泣き声・嘆いてる声から、ちょっと楽しいことを喋ってる声の表情に変わるんですよね。アンの、どんなしんどい状況でも自分の世界をなくさない、へこたれない明るさが最初に強く印象に残る場面だと思った。好き。

・ 二幕で生徒役で登場する役者さんたちが一幕の色んなところで活躍していて、そういうところで推せる!ってなったりするんだよな~~~って楽しく見てました。場面転換時のツリーチャイムを鳴らす役割を、Aチームは一幕わりとずっと、二幕でルビー役で出てくる前田あかりさんがしていて、色んな場面でずっと舞台の端に座っているんだけど、場面に合わせてくるくる表情が変わって、つい目が離せなくなってた。かわいい、そして楽しい!

・ リンド小母さん(佐藤由美子さん)がマリラを訪ねてきて「孤児を引き取った家の災難」の話を聞かせるシーンで、背後でロウソク持って歩いている女の子のホラー?サスペンス?みのある笑い声推してる。特にBでこれをやってた太田梨香子(Bのルビー役の人)さん、楽しそうですごくよかった。

・ ブリュエット夫人(浴本桃乃さん)もキャラが立ってて面白かったんだけど、連れてくる三人の子が、アンを見て意地悪そうにヒソヒソ話してるの、「この家に行ったらアンは絶対幸せになれない!」って直観させるあの感じ、めちゃくちゃ上手いなと思って見てました。

・ プリシー(濱口菜海さん)、先生に贔屓されてるという立場で、逆にそれを利用して先生を操ったり、ジョシーにも気を配ったり、クリスマス会の準備で(ジョシーが)空気を悪くさせてしまった後の対応とか、すごく大人ですごい(語彙力)キャラクターだと思うんだけど、自然に魅力的に演じてて素敵でした。プリシーとフィリップス先生(大澤尊士さん)のシーン、プリシーがめちゃくちゃチャーミングで、いやあ私が先生でもこうなるよ、と思う。フィリップス先生、出てきたときは嫌な先生だなと思って見てたけど、コミカルなシーンを重ねて見ていくうちに、だんだん憎めなくなっちゃって、いいキャラだな~~ってなる。

・ バリー夫人(福田久美子さん)、アンがダイアナに間違ってお酒を飲ませてしまったことに怒って、アンとダイアナのつきあいを禁止するの、原作読んでた子供の頃は、単純に「わざとじゃないのに、ダイアナのお母さん酷い!」って思ってたんだけど、今回、「うちのダイアナが素性のわからない子とつきあって堕落していくのを放っておけというんですか!」っていうセリフが、なんていうか、そりゃダイアナの母親の立場だったらそう思うよね、ってなってしまった。主人公と反対の立場の人の言ってることに説得力があると、物語に厚みが増す感じがする。声がまた素敵でした。

 

■ギルバート(あづくん)

このタイトルで、ここまで(5700字弱)、ほぼギルバートというかあづくんの話が出てこないの詐欺ですね。すみません。美味しいものは後にとっておく主義なんだと思ってください。

前にミュージカル『Phantom Quest』に出演した時、初舞台とは思えない、あまりに跡形もなく本人とかけ離れた別の人になってしまう、且つ、それでいて、その作り上げたシレオという役を大人気キャラクターに押し上げた名演で、この子は役を憑依させる天才なんだ、って思ったので、今回は最初から期待しまくって、どんなギルバートを見せてくれるんだろうな~~って、とても楽しみに観に行きました。

全力で期待しておいて良かったと心から思いました。ギルバートでしたね!

全世界が恋に落ちるギルバートでした。ハンサムで、成績が良くて、クラスの子たちよりちょっと大人で、賢くて優しいギルバート。言葉遣いや声に滲む品が良くて聡明な感じとか、先生が理不尽なこと言ったりした時の淡々と口の片端ちょっとだけ吊り上げる微笑とか、アンに駆け寄って握手しようと手を差し出すときの姿勢、馬車を扱う時の身体の使い方も、「あづくん」がそこに全然いなくて、完璧にギルバートだった。授業中にアンに話しかけるとき、特に追い払おうとするアンに聞き返す「えぇ?」の言い方と、この時のニヤニヤした笑顔! 女の子が自分に話しかけられて本気で拒否するはずがないって思ってる、有り体に言えば、今までの人生モテてしか来なかった男の子の素直な自信が溢れてる顔をしてた。馬車のシーンの恋してる男の子の表情もすごく好きです。

シレオの時よりはまだ本人と近い役かも、と思ったりもしたけど、そう考えると、実はもっと遠い部分もあったのかもしれない。それこそキャッチボールとか、アンの部屋の窓に石を投げるところとか、あづくんのファンが「あづくん」だと思って見ていたら、「こんな上手いわけない」って頭をよぎってしまうし、「彼なら馬車も扱える」っていう理由で頼られることに違和感を感じて笑ってしまったり、してもおかしくないわけですよ(※disってる訳では決してなく! あづくんの面白いほどの運動神経の悪さもちゃんと推してます! ほんとです!!)。それを全然感じさせない。そこに「あづくん」の影が見事にないんですよね。

憑依型、というのは、「何もしなくても役が降りてくる」という霊感みたいなものではなくて、脚本に書いてあるキャラクターの言動の裏までちゃんと整合が取れるように詰めて詰めて考えて役作りを尽くして、身体の動かし方や癖も気をつけて、とかいう、実は計り知れない研究と努力の積み重ねなんだなっていうのは、前回のミュージカル後の配信とか聴いて感じたので、今回の役作りの話もどこかで聴きたい。

しかしまあ、このスケジュールで、ほんとよく頑張ったと正直なところ思う。自慢の推しです。

 

観劇していた期間、アンの世界にどっぷり嵌って、ギルバートに恋して過ごしていたので、それが終わって、今になって、「あづくんがギルバートだった」ということを後から実感しているみたいなところがあります。いやぁ恐ろしい人を推してしまった。

これからも、もっともっと色んな、違う人物をあづくんが演じるの見てみたい、って思います。楽しみにできる未来がたくさんある。嬉しい!!

 

 

 

千秋楽おめでとうございます。お疲れさまでした!

素敵な公演をありがとうございました!!